発達支援において、私が有効と感じた教え方
発達支援にかかわる以前、子どもの頃に学校で友達に勉強を教えていたときも、大人になって大学で経済学を教えていたときも、私は人に何かを教えるとき「どう表現すると伝わりやすいかな?」という発想で、表現や組み立てを考えていました。
まず「より多くの人にピンときてもらえる(であろう)表現」を考えて、その表現が伝わりにくい人には、表現を変えながらその人がピンとくるポイントを探す…という具合。
やまぐち発達臨床支援センターで発達支援に関わらせてもらうようになってからも、最初の頃は、以前と同じような発想で指導にあたっていました。
その方法で伝わるときもなくはないですが、多くの場合、まず「説明を聞く」ことを嫌がられたように思います。
その後、内外の研修を受けたり、本を読んだり、実践を通して学びながら「教える」「伝える」のではなく、ヒントになる内容を、問題にして出す(口頭ではなく、その場で手書きでよいので、プリント形式にする)のがよさそうだということに気がつきました。
この方法では、子どもは「教わった」形ではなく、「自分で気がついた」「わかった!」という手ごたえとともに進むことになります。それがとてもよいようでした。
そのため、最近は「間にどんなプリントを差し込むといいかな?」という発想で、教材作りを考えています。
…というのが、私が発達支援において有効と感じる教え方(学習支援の方法)です。
「できること」と「まだできないこと」の間をつなぐプリントを作って、子どもの「できた!」の頻度を増やせるように。
うまくいかないことも多々ですが、学びながら、実践で試行錯誤しながら、個々人に合う方法を探していく作業はとてもやりがいがあり、このお仕事の醍醐味だなぁと感じています。
2年生の「時計」の学習における一事例
24時制の理解をうながす数直線のプリント(写真①)を以前ラクラク解けていた子どもに、「午後1時は、24時せいではなん時になりますか」という文章題を初めて出したとき「何これ?」という反応で、とっさに口頭で説明しようとしたところ聞いてもらえず、急いで写真①のプリントを用意して解いてもらいました。
その直後に、先ほどの文章題を出すと「そういうことか!」という感じでスラスラ解いてくれました。
その後もしばらくは毎回、写真①のプリントも用意していつでも差し込めるようにしていたのですが、2回目からは「これはいらない!」と言って、文章題をそのまま上手に解いています。
1年生の「時計」の学習における一事例
時計の「○時半」を読むことがまだ難しい子ども向けに、写真②の教材を用意しました。これを見れば子どもは自信をもって答えられ、「正解! よくできました!」の言葉をもらうことができます。
この教材をプリントとして使ったり、フラッシュカードとして使ったりしながら、短針の位置と○時台の組み合わせが定着することを目指しました。
1年生の「カタカナ」の学習における一事例
1年生の学習支援において最も基本的で大切なことの1つが、子どもが自信をもって書ける文字の大きさになっているか、です。
国語の事例として挙げていますが、国語に限らず、子どもがプリントなどへの取り組みを渋っているとき、その原因の1つとして、回答欄が小さすぎて書ける気がしていないという場合があります。
子どもたちそれぞれが、今、自信をもって書ける文字の大きさを把握して、余裕をもって書ける大きさで教材を提供することで、文字を書くことへの抵抗感を和らげながら様々な取り組みにチャレンジしてもらいやすくなります。
プリントを拡大コピーすることで対応できる場合もあるし、それでも自信をもって書くには小さい回答欄であれば、自作することもあります。
小集団指導では、プリントは、それぞれの子どもに合わせて用意します。
まだガイドなしに書くことが難しい子どもには、手元にお手本を用意したり、点線を書き込んでなぞることができるようにしたりしています。
まわりのお友達と違うプリントに取り組むのを嫌がる子どもがいるクラスでは、一旦、なぞり教材を全員に取り組んでもらってから、なぞりなしのバージョンにも皆に取り組んでもらうという形で進めることで、少なくとも1枚目は、皆で意欲的に取り組めるようにしています。
小集団クラスで、カタカナを見るだけで逃げ出していた子どもが、半年ほどでカタカナをスラスラと読み、大きめの枠に、お手本を見ながら(なぞりがなくても)書けるようになりました。
(本稿は、私が「やまぐち発達臨床支援センター 活動報告集 第21号」に寄稿した2021年11月執筆の「学習支援におけるスモールステップ作り」をベースとし、本サイトに向けて編集を加えたものです。)