学術的背景から深く学べるアサーティブ・コミュニケーションの解説書「アサーティブネス その実践に役立つ心理学」を読んだ感想

学術的背景から深く学べるアサーティブ・コミュニケーションの解説書「アサーティブネス その実践に役立つ心理学」を読んだ感想

どんな本?

アサーティブ・コミュニケーションについての学びを深められる一冊。

(アサーティブ・コミュニケーションとは、自分も相手も大切にするコミュニケーションの手法のこと。詳しくは → アサーティブ・コミュニケーションとは? アサーティブ/アサーションという言葉の意味と接点

アサーティブ・コミュニケーションについて、裏付けや方法の成り立ちがわかる、研究者執筆の本を読みたいなぁと思って、探して買った本です。

本書の著者は、近畿大学総合社会学部で教授を務める心理学博士の堀田美保さん。

本書の特徴である、心理学との関連を深掘りする狙いについて「はじめに」に記載があるので、一部引用します。

アサーティブネスはもともと心理療法の中で生まれてきたものですから、もちろん心理学と無関係ではありません。(中略)現場で伝えられているアサーティブネスは、その背景となっている心理学的研究からの成果をあまり意識することなく、経験的に実践されてきました。その両者に橋を架けたいというのが、本書の狙いです。

本書では、アサーティブネスのポイントを紹介しながら、それらに関連する心理学的研究からの知識や理論を紹介することで、アサーティブネスが示すそれぞれのポイントには根拠があることを示していきたいと思います。

出典: 堀田美保『アサーティブネス その実践に役立つ心理学』ナカニシヤ出版, 2019年9月, p.vii

「アサーティブネス」とは、「アサーティブであること」です。

感想

心理学の系譜を、私が今興味をもっていること(=アサーティブ・コミュニケーション)に絞って、わかりやすく解説してくれているような本で、とても興味深く、勉強になりました。

学術的な背景を深掘りする内容ですが、小難しいこともなく、とても読みやすく、わかりやすく書かれています。

日常生活に即した状況がいくつか例として出てくるのですが、それがとてもリアル。こんな場面でどうしたらいいの? が想像しやすいです。

コミュニケーションや相手との向き合い方の前に、心の持ちようや自分との向き合い方もたっぷり。

「第2章 アサーティブネスの生い立ちと心理学的ルーツ」と「第3章 自分の感情と向き合う」が特におもしろかったです。

アサーティブ・コミュニケーションの背景を学びながら、考え方や方法論についてもより深く考えることができる、いい本でした。

本の概要

書誌

書名アサーティブネス
その実践に役立つ心理学
著者堀田美保
出版社ナカニシヤ出版
発行年2019年9月

目次

第1章 アサーティブであること

  1. 日常的に見られるコミュニケーションタイプ
    1. 3つのコミュニケーションの型
    2. コミュニケーションを考える2つの軸
  2. アサーティブなコミュニケーションのスタンス
    1. アサーティブネスを支える柱
    2. 柱を支える土台

第2章 アサーティブネスの生い立ちと心理学的ルーツ

  1. アサーティブネスの生い立ち
    1. 心理療法としての誕生
    2. 心理療法から心理教育へ
    3. 心理学の発展に伴ってアサーティブネスに加わった要素
  2. アサーティブネスのルーツ
    1. 「行動」という要素~行動主義心理学(Behaviorism)
    2. 「認知」という要素~認知主義心理学(Cognitive psychology)
    3. 「人間尊重」という要素~人間性主義心理学(Humanistic psychology)
    4. 心理学発展の社会的背景

第3章 自分の感情と向き合う

  1. アサーティブネスにおける感情との向き合い方のポイント
    1. 自分の感情を誠実にみつめる
    2. 感情を言葉で表現する
    3. 自他尊重に基づき感情を表現する
  2. アサーティブに感情と向き合ううえで,役立つ心理学の話
    1. 感情は私たちの役に立っている
    2. 感情とは身体的反応に対する言葉のラベルである
    3. 感情のコントロールには良し悪しがある

第4章 自分の想いを伝える

  1. アサーティブネスにおける想いの伝え方のポイント
    1. 言葉にして,伝える
    2. 具体的に,客観的に整理する
    3. 言葉と態度を一致させる
  2. アサーティブに自分の想いを伝えるうえで,役立つ心理学の話
    1. 人はそれぞれの現実を生きている
    2. 言葉以外が意外と伝わる?
    3. 言葉にすることで社会的な力が得られる

第5章 自分への〈批判〉を扱う

  1. アサーティブネスにおける〈批判〉の扱い方のポイント
    1. 〈批判〉を怖がらない
    2. 〈批判〉をいったん受け止め,そしてよく眺めてみる
    3. 〈批判〉の中身と怒りを分ける
  2. アサーティブに〈批判〉を扱ううえで,役立つ心理学の話
    1. 〈批判〉の言葉は,自分のすべてではない
    2. 〈批判〉にはいろいろなものが含まれている
    3. 怒りと思えるものにもいろいろある

コラム:

  1. 気持ちの予測は強めになる~感情のインパクト・バイアス  
  2. 感情体験の筆記におけるポイント  
  3. 持ち運んでいるなわばり  
  4. 「怒った顔」は見つかりやすい