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アサーティブ・コミュニケーションとは?
アサーティブ・コミュニケーションとは、自分も相手も大切にするコミュニケーションの手法のこと。
近年、企業研修等において人気があるテーマのひとつといわれています。
アサーティブ(assertive)は元々「自己主張が強い」という意味合いの言葉ですが、アサーティブ・コミュニケーションというときには、言いづらいことを飲みこまず、相手のことも尊重しながらきちんと伝えられる、ということを指します。
アサーティブの名詞形となるアサーション(assertion)も元は「主張、断言」の意味ですが、「アサーション・トレーニング」といったように、アサーティブ・コミュニケーションの意味合いにおいても使われる用語になっています。
アサーティブ・コミュニケーションの成り立ちについて、戸田久実さんの『アサーティブ・コミュニケーション』に簡潔でわかりやすい記載があったので、以下に一部引用します。
アサーティブ・コミュニケーションは(中略)1950年代に、アメリカの心理学者ジョゼフ・ウォルビが開発した「行動療法」という心理学療法のひとつです。(中略)その後、1970年代から1980年代のアメリカで起きた、人種や性の差別に対する人権回復運動のなかで、コミュニケーションの訓練法として広がりを見せ(中略)ました。
出典: 戸田久実『日経文庫 アサーティブ・コミュニケーション』日本経済新聞出版, 2022, p.3-4
3つの自己表現タイプ
攻撃的(aggressive)
相手を抑えて、自分の言いたいこと・やりたいことを一方的に通そうとする自己表現のタイプ。
直接相手に対して攻撃的な言動をするタイプだけでなく、不機嫌そうにして相手をコントロールしようとする、相手が困るように裏で立ち回る…といった受動攻撃的(passive aggressive)なタイプも、攻撃的な自己表現に含まれます。
非主張的(non-assertive)
自分を抑えて、相手の言うことを受けいれる自己表現のタイプ。
アサーティブ(assertive)
相手の都合や希望を丁寧に聞きとり、自分の状況や希望もしっかり伝えて、お互いにとって良い方法を探し出そうとする自己表現のタイプ。
補足
アサーティブ・コミュニケーションについて調べると、それぞれのコミュニケーションタイプについて様々な表現が見られますが、本稿では、私がわかりやすいと感じた戸田久実さんの『日経文庫 アサーティブ・コミュニケーション』をベースにしてまとめました。
また、本稿では、受動攻撃性(passive aggressive)を攻撃的タイプのなかの一種として扱っていますが、攻撃的タイプと区別し、ぜんぶで4タイプとする考え方もあります。
この言葉との出合いと、発達支援との関連性
アサーティブ・コミュニケーションは、障がいの有無にかかわらず、近年、企業研修等で注目されているテーマです。
コミュニケーションの円滑化によって生産性を上げたい、チーム力を向上したい…といった目的のほか、パワハラ防止の観点から管理職向けの研修などでも扱われているそうです。
私自身は、発達支援をするなかで「アサーティブ・コミュニケーション」という言葉と出合いました。
当時、担当している子どもが、小集団のなかで、言いたいであろうことを我慢して苦しそうな顔をしている様子が見られ、自分の気持ちをどう伝えたらいいか…ということを教えたいと思っていました。
とはいえ、どう教えたものか…?? と色々調べるうちに「アサーティブ・コミュニケーション」という言葉に辿りついたのが、この言葉との最初の出合いです。
次に接点があったのが、発達障がいに特化した就労移行支援事業所を見学にいったとき。
そのときたまたま「アサーティブ・コミュニケーション」の授業をしていて、なるほど…確かに、発達特性がある大人にとっても、この考え方やスキルは有効に活用しやすいなぁと納得したのでした。
まとめると、昨今の「アサーティブ・コミュニケーション」ブームは発達障がいの関連ではありませんが、アサーティブ・コミュニケーションの考え方や方法は、発達特性がある人にも力強い味方になってくれると思います。
私も発達支援に取り入れていきたいと考えているテーマのひとつです。