発達障がいとは? 「発達と」が考える「発達障がい」の定義と伝えたいこと

発達障がいとは? 「発達と」が考える「発達障がい」の定義と伝えたいこと

発達障がいは、一見して障がいがあることがわからない、理解してもらうことが難しい障がいです。

でも、だからこそ、知ってもらうことがとても大切だと思っています。

この記事では、「発達と」運営のフクイユウが、子どもたちと接しながら学ばせてもらっている支援者として、また、私自身、ASD傾向の特性をもつグレーゾーンだと自己分析しているので、ある種ひとりの当事者として、

私の視点から見た「発達障がいとは」と「発達障がいについて知ってほしいこと」をまとめました。

発達障がいとは

一般的な発達のしかたのことを「定型発達」といいます。

これに対し、発達の速度に凸凹があること、また、それによる行動面・情緒面などの特徴を「発達特性」といいます。

発達特性は生まれつきのもので、脳機能(脳の働き方)が異なることによるのだそうです。

発達特性を持っている人のなかで、特性による困りごとや困る気持ちを本人や家族が抱えていて、それが、本人や家族の努力や工夫だけで解決できる程度や内容ではない(支援があった方がいい)場合に「発達障がい」とされるのだろう、と私は解釈しています。

実際には、医師の診断がある場合に「発達障がい」とされるので、困っていても診断がない場合には「発達障がいの可能性」がある状態ということになります。

定型発達でも発達障がいでもない、その間に位置するところを「グレーゾーン」といいます。

困りごと・困る気持ちがあるけど診断基準に満たない人、発達特性があるけど自分でそれなりに生活や学習や仕事などをできる人などは「グレーゾーン」ということになります。

障がいはどこにある?

最近は、障がいは人にあるのではなく、社会や環境の方にあるという考え方もされるようになってきました。

ハードル走のハードルみたいなものですね。

発達障がいについていうと、定型発達に合わせて作られた社会のしくみや社会通念の方に障がいがある(発達特性がある人にとってはハードルがたくさんある)ということになります。

普通が普通じゃない

定型発達の人にとって普通のことが、発達特性がある人にとってはすごく難しかったりします。

私も子どもの頃、皆が楽にやっていることがめちゃくちゃ努力したり、時間をかけたりしないとできなくて「皆みたいにすんなりできたらいいのに…」と思うことがありました。

私の場合は特性がそんなに強くないこともあって(←自己分析)、自己流でハードルを越えたり避けたりしながらやってきましたが、

自己流の努力ではハードルを越えられない人もたくさんいることを、知ってもらえたらいいな…と思います。

「言わなくてもわかるでしょ」がわからない

定型発達の人にとっては意識しないくらい当たり前のことが、発達特性がある人にとっては、その人にとってわかりやすい形で具体的に伝えてもらわないとわからないことだったりします。

発達支援(療育)の分野では、コミュニケーションのしかたや暗黙のルールなど、社会性を身につけるための学習を「ソーシャルスキル・トレーニング(SST)」といいます。

ひとつのジャンルができるくらい、発達特性がある人にとって必要なことなのです。

発達特性があっても、ソーシャルスキル・トレーニングを受けたことがない人の方がまだまだ多いでしょうし、受けたことがあっても今の社会で求められることのすべてをカバーできているわけではありません。

だから、誰かになにかを伝えるとき「あれ? 伝わってない感じ…」と思ったら、①具体的にする、②言わなくてもわかるはずと思って省略していることがないか考えてみる→あれば言葉にして伝える、③紙に書き出す…など、伝え方を変えてみてもらえるといいかもしれません。

感情の起伏が大きい

発達特性がある人には、感情のふり幅が大きい人が多いように思います。

楽しいことも、悲しいことも、気になっていることも、定型発達の人より大きく心が動いているのではないかと思うのです。(私の個人的見解ですが、自分とまわりを観察してそんな気がしています。)

感受性という意味では、いいことでもあります。

ただ、それだけ心が揺さぶられるので疲れやすかったり、悲しい気持ちや辛い気持ちのときに立て直しに時間がかかったりします。

また、寝つきが悪いという話もよく聞きます。

担当している子どものお母さんが「なかなか寝てくれないんですよ」とおっしゃっていて、お話を聞きながらその子に「頭が忙しいんよね」って言ったら、「そうそう、なんでわかるの?」と。私もそうだから。わかりすぎる。

楽しいことがあった日はテンションが上がりすぎて、悲しいことがあった日は悲しい気持ちに支配されて、気になることがあるときは考えごとをしてしまって、なかなか眠れないんですよね。

集中力を高めて暮らしている

私は聴覚がほんのすこし弱いです。

聴力検査では異常がないのに、話が聞きとれないことが人より多いなと大人になってから薄々思っていたのですが、発達支援をするようになって勉強しているうちに「聴力」じゃなくて「聴覚」か…と。

ほんのすこしなので、暮らしや仕事に大きな支障はありません。

ただ、聞きとることが主のときには集中力をかなり上げないといけません。

例えば、私はコントも漫才も好きなんですが、コントは集中力を上げなくても楽しく見れるけど、漫才は集中しないと何を言っているのか全然頭に入ってきません。

講談は漫才より集中しないと意味がとれないし、落語はほぼ聞きとれません。

音としては聞こえているのですが、言葉として入ってこないのです。知らない外国語を聞いているときのような感じです。

仕事にも関係する話でいうと、電話が苦手です。

まったく無理というほどではないですが、講談を聞くときくらい集中力を上げて、それでも意味がわからない言葉が聞こえてきて、混乱したりします。

以前友だちとの待ち合わせのときに、電話で「鉄火レーサーが見えるでしょ?」って聞こえたので、そんなお店があるのかしら? と思って見渡しても見あたらず、聞きかえしたら、「エスカレーター」でした💧

この頃はまだ「聴覚」を知らなかったので、私の耳どうなってんの…と思っていました。

同じようなことは度々あるのですが、このときは自分でも「鉄火レーサーってww」とちょっとおもしろかったので、よく覚えています。

私自身に集中力を上げて対応していること、集中してもできないことがあるので、支援者として子どもたちを見たとき、皆がどれだけ集中力を高めてがんばっているのか自然と伝わってきて、愛おしい気持ちになります。

この記事を読んでくださっている皆さんも、学校で朝から夕方まで集中力を高めて過ごしている子どもたちを想像してみてください。

ねぎらいたい気持ちになりませんか?

「見えない障がい」ということ

発達障がいは、とても見えにくい障がいです。

一見してわからないだけでなく、行動や発言を見ていても、普通だったり優秀だったりする場合もあり、本人や家族が抱えている「大変さ」や「努力」が、まわりの人からはなかなか見えません。

それゆえ、特性による行動や行動できないことについて、なまけているとか、わがままだと捉えられて、強い言葉をかけられてしまうこともあります。

また、「見えにくい」ことから、周囲も本人も障がいの存在に気がついていないこともあります。

大人になってわかるケースが、最近よく話題になる「大人の発達障がい」です。

相手が誰であっても、障がいのあるなしにかかわらず、誰かの行動や行動しないことについて「あれっ?」と思ったときには、いきなり叱ったりせず、「この人はこのこと(この状況)がものすごく苦手なのかも…」と考えてみてください。

脳機能は皆すこしずつ違うものです。定型発達とされる人でも、特定のことが一般的には想像できないレベルで苦手な場合もあるかもしれません。

大切なことは、その人がどのカテゴリにあてはまるかということではなく、自分が想像できないくらい特定のこと/様々なことを難しいと感じる人がいる、という視点をもつことです。

伝え方を変えれば/適したサポートをすれば、スムーズにできるかもしれません。得意なことに集中してもらう方がいい場合もあるかもしれません。

「できて当たり前のことなんてないんだ」と思ったら、「この行動や結果にはどういう過程があるんだろう」と想像してみたら、ものごとの感じ方がすこし変わってきませんか?

発達特性がもたらすもの

発達特性がある人は、好きなことや興味が向くものへのエネルギーが強い人が多いように思います。

好きなこと/興味があること/適性があることに対して、時間を忘れて熱中したり、コツコツと取り組んだり。好きなことのために、別のこともがんばれたり。

それぞれの強みを存分に発揮できる社会に早くなるように、発達障がいや発達特性のことをもっと広く深く知ってもらえたらいいな、そのために私もできることをしていこうと思います。

まとめ:「発達と」が考える、発達障がいとは

発達の速度に凸凹があること、また、それによる行動面・情緒面などの特徴を「発達特性」といい、

発達特性を持っている人のなかで、特性による困りごとや困る気持ちを本人や家族が抱えていて、それが、本人や家族の努力や工夫だけで解決できる程度や内容ではない(支援があった方がいい)場合に「発達障がいの可能性がある」といえます。

発達障がいの診断は、専門の医師が行います。

発達障がいは生まれつきの脳機能の違いによるもので、病気ではありません。

病気ではないため治る/治すという性質のものではありませんが、発達支援(療育)、学習支援などにより「できる」へ導くアプローチもすこしずつ進んできています。

保護者さんが共感しあえる人とつながることへの情報共有。ペアレントメンター、親の会ほか。
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